40年程前、高校生だった頃に第2次IVYブームがあった。
たいした小遣いもなく、「VAN」のシェトランドセーターを買えたから、次は「コンバース」のオールスターを買おう…そうやって、少しずつワードローブを揃えていくのが楽しみだった。
シャツ、ニット、パンツ、スニーカー、と揃えていくのだけど、後回しになってしまうのがバッグ。なので、あの頃どんなバッグを使っていたのか、ほとんど記憶にない。
唯一記憶にあるのが、当時爆発的に流行った「ボートハウス」のトートバッグ。サックスブルーに白のロゴ。上部にはファスナーが付いていて便利だったので、大学に入学してからも使っていた。
でもあの頃、本当に欲しかったのは「ボートハウス」ではなく、本チャンのトートバッグ。そう「L.L.Bean」のトートバッグだったのだ。
“運ぶ”という意味を持つ『tote』が、現在のトートバッグのようなデザインになったのは、1900年代に入ってからと言われている。
やがて、アメリカのアウトドアブランド「L.L.Bean」が1944年『Ice Carrier』を発売。『Ice Carrier』とは、厚手のキャンバスを使用した、ベーシックなトートバッグで、もともとは「氷や木材を運ぶために作られた」というのも、よく知られた話。
確かに、40年前のメンズクラブなどで度々目にしていた「L.L.Bean」のトートだが、実はなかなか手に入らなかったのだ。
田舎のトラッドショップでは売られてなく、おそらく通販はあったと思うけど、現在と違い通販でモノを買うというのも勇気がいることだった。
それに当時のアメリカ物は結構高かったはず。なので、「ボートハウス」がボロボロになるまで使っていた。
今となっては、通販なんて普通のことだし、「L.L.Bean」も気軽に買える。配色や大きさも好みのものを選ぶことができる。数年前まで、私はネイビーベースにボトムがレッドのミドルサイズを使っていた。
こうして気軽に買えるようになると、やはり昔のような憧れもなくなっていたが、2年程前に久しぶりにワクワクした気持ちで、この「L.L.Bean」のトートを買うという出来事があった。
自分の部屋の隅に、アウトドア物のサコッシュからヴィンテージの革のミニショルダーなどが、ごちゃっとあるのだが、目にする度に「整理しなきゃ」と思っていた。
その時に思いついたのが「大きめのトートにまとめて入れちゃおう!」だった。なんとも短絡的なアイデアだったが、それが「L.L.Bean」のトートにハマるきっかけになってしまった。
いつでもどこでも買えるものはトキメかないので、せっかくならヴィンテージで探してみよう!と悪い癖が。
探しているうちに、「L.L.Bean」のトートバッグにもいろいろと蘊蓄があって、けっこうなマニアが存在することも判明。
まずは、この手の蘊蓄には必ずある「新旧タグ」の話。このバッグにもありました。70年代の「筆記体タグ」や80年代の「2色使いタグ」、そしてタグの縫い付け方までアレコレ。
それから、取っ手の裏側や両サイドに青いガイドラインステッチ(いわゆる生地の耳)があるかないか。リーバイスもそうだけど、この「生地の耳」って何故か惹かれるディティール。
そして、ビジュアル的に大きな要素を占めるのが、2本の取っ手の間隔。いろいろと見ているうちに自分でも気付いたのだが、この2本の取っ手の間隔が狭いほど時代が古いらしい。
60〜70年代のものは間隔がかなり狭く、平行に付けられている。80年代になると下の方が少し広くなってきて、90年代から現在にかけては、間隔はけっこう広めになり、見た目的にも安定感があって持ちやすそうなかんじになる。
でもね…古いデザインを知ってしまうと、その間隔が狭いのが妙にカッコよく見えちゃうのでアール。
じゃ、ここは一発取っ手の間隔が狭いヴィンテージいきましょう!と思ったものの、そう簡単にはいかないのがヴィンテージ。
70年代の頃のものは、グリーンやエンジなど、なかなか惹かれるレアカラーがあったのだが、値段を見て顎が…平気で5万オーバーなのだ!部屋に散らばっているバッグを入れるために探していたトートに5万はない。
こちとらヴィンテージは好きだけど、そんなにお金はかけられない…という中途半端な人間。ひとつを極めるのも素晴らしいが、人間はバランスも必要でアール。
そんな中途半端なオタクにぴったりなのが、80年代のトートバッグたちだった。たち…と書いたのは、色違い、サイズ違い、ディティール違いと、ここでも悪い癖が…
根気よく探し、手に入れたのはトータル4個のトートバッグたち。デッドストックに近いキレイな状態のもので、お値段も1万円前後と心にも健康的。ニコ
大きいトートには、普段使わない多種多様なバッグや、最近使っていないカメラなどが入っている。
手前のネービー×オフホワイトは超定番色のミディアムサイズで、アンサンブルの練習をするときの楽譜が入っていて、普段使いのお気に入り。
いい眺めだ。
コレクションを整理するとはいえ、持っていたモノを手放すのは少し寂しい…だから、こうしてブログに記録し、あとから読み返してみよう。
そう思い、書き始めたこの「VINTAGE 7」なのだけど、手放すと同時に、ついこうしてコレクションしてしまう、服・靴・バッグが好きな自分がいることに気づく日々。
シンプルに、そして質素に暮らしたい…などと思いつつも、人間なんて、そんなに簡単に変われないものなので、アール。
そして、60年以上も前に現れた「L.L.Bean」のトートバッグが、未だにデザインも変わらずに、多くのファンから支持されているのは、なんとも不思議なので、アール。