とても好きだったのに、歳を取るにつれ、あまり着なくなったアイテムがある。それはニットである。中でもローゲージのニット。
ニットはとても好きなアイテムだったので、昔は何かしら毎シーズン買っていたように思う。ジョンスメドレーのようなハイゲージも好きだったけど、一枚でオシャレできるミドルゲージやローゲージのニットが大好きだった。
ドリスヴァンノッテンがデザインしたローゲージも好きだったし、アルプスの老舗が作る伝統的なチロリアンニットも好きだった。
そして中でも、さらに大好きだったのがスコットランドやアイルランドのフィッシャーマンセーターだ。
大学時代のスキーに行った時の写真を見たら、スキーウェアではなく、なんとフィッシャーマンセーターを着てスキーをしていた(笑)
あの頃は、インポートショップで売られているものは、どうにも高すぎて手が出ず…で、確か友達の女の子に無理言って編んでもらったような記憶がある。
フィッシャーマンセーターの代表といえば、【 INVERALLAN (インバーアラン)】だろう。
インポートブランドに興味を持ち始めたのが、もう40年ほど前だが、その頃からニットといえば、やはりイギリスものが人気だった。
ただ、イギリスのニットブランドは星の数ほどあり覚えるのも大変。とくにスコットランドあたりのブランドの英語表記は、妙にクラシカルでカッコよく、どのブランドも一流ブランドに思えたものだ。
『JOHN SMEDLEY』『Corgi』『Pringle』『Ballantyne』『McGeorge』『JAMIESON’S』…etc.
【 INVERALLAN (インバーアラン)】もそのひとつ。
他にも、ざっくりと編まれたローゲージのニットブランドはたくさんあったけれど、このブランドだけ突出して値段が高かった。
どのような背景で高かったのかはよくわからない。編む人(ニッター)が、他メーカーよりもクオリティの高い人たちだったのかもしれない。
触っただけで良し悪しがわかるというわけでもなく、値段に左右されるというのは人間のちょっぴり悲しい性ではあるが、背景をよく知らない輸入品を手に入れるときは、やはり値段はひとつの目安となる。
【 INVERALLAN (インバーアラン)】は、実は「フィッシャーマンニット」のメーカーとしては、歴史のある古いブランドではない。1975年という、比較的現代に立ち上げられたスコットランド発のニットメーカーなのだ。
ARAN SWEATER(アランセーター)という言葉がある。アイルランド西側にあるアラン諸島で古くから作り続けられてきた伝統的な漁師のためのセーターだ。
その伝統的なアランセーターを参考にし、ハンドメイドニットの良さを残しながら、現代のファッションとしても着られるよう編まれているが【 INVERALLAN (インバーアラン)】のニット。(なのだそう)
歴史が新しいとはいえ、ひとつひとつ手作業で編むニッターは経験豊かな職人の人たち。そういえば、買った時にニッターのサインが入ったタグが付いていたけど、そういうのってロマンがあっていいな。
ただ、ちょっと残念なニュースもあって、昨今のスコットランドでは熟練した職人が少なくなり、またコストの面からも生産拠点を海外に移さざるを得ない状況らしい。現在日本に入ってきている【 INVERALLAN (インバーアラン)】のほとんどはインド製なのだとか。これも時代の流れか。
タグや生産国に拘るのはバカらしい…という方も多いだろう。
でも、タグやその背景にある、遠い異国に憧れを抱きながら育ったオッさんにとっては、それはとても大切なことなのだよ。
だがしかし、家の中で楽チンに過ごすには、ごついローゲージのニットよりも、ついついゆったり目のトレーナーを着てしまう。
それが、現在のオッさんの実態であった(悲)