先日、近所のセブンイレブンに行ったら入口で声をかけられた。
「お久しぶりです!Y山です。いつもブログ読んでます。VINTAGE7の更新待ってます!」
かつて店に勤めていた頃のお客さんだった。
たまに「ブログ読んでます」と声をかけられることがあるが、そのほとんどは「FEROKIE BLOG」の方だった。それもそのはず、「VINTAGE7」は数ヶ月もの間、更新をしていなかった。
クローゼットを埋め尽くす長年のコレクションを解放するために書き始めた「VINTAGE7」だったが、解放することに忙しくブログの更新が後回しになっていた。
しかし嬉しいことに、こんな素人のファッションブログを読んでくださる人もいたのだ。少し反省。
「解放する」ということは「手放す」ことで、簡単に言えばオークションに出品することだ。
だが、服好きの性(サガ)なのだろうか、2点出品しては1点落札するということを繰り返し、クローゼットはあまり軽くなっていない。
服屋に勤めていた頃は、当然店で販売しているブランドを身につけるわけで、ヴィンテージが好きだったとしても、そのほとんどはクローゼットに眠ることの方が多かった。
しかしフリーとなった今、勤めていた頃には購入を躊躇っていたヴィンテージをひたすら探すことが多くなった。
クローゼットの解放は一生終わらない。
コートは何点か所有していたが、積極的に買うことはなかった。
理由のひとつは店の中では着ないこと。どうしてもシャツやニット、パンツなどの方が着用頻度が高いし、特にシューズやスニーカーは毎シーズンのように購入した。
アウターに関して言えば、車での移動が多いので、コートよりはブルゾンやアウトドアウェアの方が断然多かった。
そんなコートというアイテム。オリジンを遡れば、やはりイギリスに辿り着く。
そしてイギリスのコートといえば、やはり「Burberry’s / バーバリー」だ。
小さい頃、冬になると母親がよく言った。
「外に出るからコート着なさい」「寒いからオーバー着なさい」「雪降ってるからアノラック着なさい」ときには「バーバリ着なさい」と。
アノラックだけはナイロン製のイメージがあったが、他の3つの違いはわからなかった。
この「バーバリ」は「バーバリー」のことだが、もちろん本物の「バーバリー」は持っていなかったと思う。田舎の人間にとっては、昔から「バーバリー」はコートの代名詞だった。
しかし、社会人になると「バーバリー」は、「サラリーマンのためのコート」というイメージが強く、欲しいと思ったことは皆無だった。
特に「バーバリー」の中でも最も人気のあった「トレンチコート」は、丸の内で働く一流企業マンが身につけるアイテムとしか思っていなかった。
ここ数年、タイトなシルエットからオーバーサイズへとファッションのトレンドが変化した。
そこで注目され始めたのが、オーバーサイズのコート。そして、ファッション業界の人たちが密かに探し求めたのが、ゆったりとしたサイズ感のある古い「バーバリー」のコート。
一昔前まで古着屋といえば、アメリカブランドのデニム、ミリタリーウェア、カレッジウェアを扱う店が多かったが、最近はヨーロッパのクラシックなウェアや80〜90年代のデザイナーズウェアを揃える店が増えた。
特に「バーバリー」のコートは人気が高いらしい。中でも「一枚袖」といわれるモノは希少性が高く、コレクションしている人も多いという。
「一枚袖」というのは、一枚の生地で構成される袖のことで、縫い合わせが内側(下側)にある。 通常、コートの袖は2つのパーツで構成され、袖の外側と内側の2箇所に縫い目が現れる。 (これを二枚袖と言う)
「二枚袖」は、肩から袖にかけてのステッチがあるため、肩が丸く膨らみ、いかにもサラリーマンぽくなってしまう。
しかし「一枚袖」は肩からストンと落ちる。ゆったりとしたシルエットが美しいAラインを描く。
そして、そのAラインを美しく描くのが「バルマカーンコート」である。日本では「ステンカラーコート」と呼ばれるが、正式には「バルマカーンコート」
「トレンチ」に比べ「バルマカーン」はいろんなスタイルに合わせやすく、見た目もそれほど重々しくないので、春秋冬とシーズンごとに着こなしを堪能できる。
私が最初に「バルマカーンコート」の「一枚袖」を手に入れたのは、ほんの数年前。少しオリーブに近い色めのベージュで、1970年頃のモノらしい。
「一枚袖」のついでに、もうひとつ蘊蓄を加えれば、素材はコットン100%が良い。さらに、光沢の出る「玉虫」のコットン100%ならなお良い。
ただコットン100%は、ポリ混に比べれ耐久性に劣る。ヴィンテージとなれば、袖の端や襟元が擦れているものが多い。状態の良い、キレイなモノを求めれば十万円を超える。
自分は一流企業人ではないし、もはや勤め人でもない。多少くたびれているくらいの方が好みだ。
確かに、手に入れたコートも襟のところが少し擦れて、ごく小さな穴が空いていた。その穴を自分で縫い、修理する。それもまた自分のモノになったような気がして悪くない。
「MADE IN ITALY」や「MADE IN FRANCE」も良いが、やはり「MADE IN ENGLAND」は、各式があってさらに良し。
バーバリーのハウスチェックは、ややお嬢様ルックにも思われがちだが、こちらは渋めの茶系チェックというのも良し。
この「バーバリー」の魅力に惹かれ、数年後にはネイビーも手に入れた。色違いが欲しくなるのは昔からの悪い癖だ。(自分では良い癖だと思っている)
「バルマカーン」に似ているが、これは「ラーダーコート」呼ばれる着丈が長いモデルで、シルエットもさらにゆったり。長身ではない自分が着ると、コートが歩いているように見える…が、別にいいのだ。
このゆったりとしたコートに「johnstons」や「Faliero Sarti」のマフラーをぐるっと巻きつけて、「Adidas」のクラシックなスニーカーを合わせる。
そんなスタイリングが好きだ。でも、こんな格好でスーパーに買い物に行くのは、ちょいと気合いが入りすぎかも…
と言うわけで、年に数回、れんが倉庫美術館や青森県立美術館に行くときのスタイルとしている。
だから美術館を訪れるのは、夏以外と決めているのだ。